トラック運転者の改善基準告示改正とは何?押さえておくべきポイントを解説
2024年4月、トラックやバスなどの運転手を抱える事業者に対し、健康や安全確保の観点から拘束時間などの見直しが行われた「改善基準告示改正」。
本記事では、事業者として押さえておくべき改善基準告示改正の内容について解説します。
休憩時間や運転時間などに細かく基準が設けられており、違反した場合は社名公開などのペナルティもあります。
改善基準告示改正に対応する方法も紹介するので、物流事業者の方はぜひ参考にしてください。
目次
1. トラック運転者の改善基準告示改正とは何?概要を解説
拘束時間の上限が短縮
運転時間の上限が策定
休息時間が継続11時間に変更(特例有り)
改善基準告示改正の背景
2. 改善基準告示改正に対応しなかった場合の問題点
社名が公開される
物流コストが高騰する
人材が確保できず事業の衰退
3. 改善基準告示改正に対応するためのポイント
サプライチェーン全体での拘束時間削減
ITツールを用いた物流DX
4. 物流事業者は改善基準告示改正への対応に取り組もう
1. トラック運転者の改善基準告示改正とは何?概要を解説
引用:厚生労働省 トラック運転者の改善基準告示が改正されます!(リーフレット)
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働省告示)のことです。
トラックやバスなどのドライバーの長時間労働が問題視され、2024年4月から時間外労働が960時間までに上限規制されたことに伴い見直しが行われました。
ここでは、改善基準告示改正の概要について以下の4点を解説します。
-
拘束時間の上限が短縮
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運転時間の上限が策定
-
休息時間が継続11時間に変更(特例有り)
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改善基準告示改正の背景
トラックドライバーを抱える物流事業者としては必ず押さえておきたい内容です。
拘束時間の上限が短縮
改善基準告示改正よって、ドライバーの拘束時間は以下のように見直されました。
期間 |
上限 |
延長上限 |
1年 |
3,300時間 |
3,400時間 |
1ヶ月 |
284時間 |
310時間 |
1日 |
13時間以内 |
15時間 |
年間と月間の拘束時間は労使協定により少し延長ができますが、上記以外にも「1ヶ月の時間外・休日労働時間が100時間未満」という条件を満たす必要があります。
拘束時間が厳格に決められているため、事業者は時間内で業務を遂行するマネジメントが求められるようになりました。
運転時間の上限が策定
運転時間にも、以下のように上限が策定されています。
- 2日間の平均が1日9時間以内
- 2週間の平均が1週44時間以内
- 連続運転時間は4時間まで
- 運転を中断する際は1回あたりおおむね10分以上、計30分以上の休憩を与える
サービスエリアやパーキングエリアが無い場合は最大4時間半まで延長は可能ですが、基本的には4時間以上の連続運転が禁止されました。
長時間の運転は危険なので、事業者の方はドライバーの健康面だけでなく事故予防など安全性の観点からも順守しましょう。
休息時間が継続11時間に変更(特例有り)
休息時間は継続して11時間以上与えることを目標とし、9時間未満にならないようにする必要があります。
特例として運行上どうしても9時間未満となる場合は、運行終了後に12時間以上の休息が義務づけられました。
改正前は継続8時間以上という規定だったため、休息時間が大きく伸びたことになります。
改善基準告示改正の背景
改善基準告示改正の背景として、2024年4月からドライバーの時間外労働が960時間までに上限規制されることが挙げられます。
かねてよりドライバーの労働時間の長さは問題視されており、健康を損なう方も多く見られました、
2022年の厚生労働省調査によると、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況は「運輸業,郵便業」が最も多い56件となっています。
また、ドライバーの長時間労働は全産業から見ても長く、健康や安全性の観点から見直しが行われました。
参照:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」
2. 改善基準告示改正に対応しなかった場合の問題点
改善基準告示改正に対応しなかった場合や、できなかった場合に懸念される問題点を3点解説します。
- 社名が公開される
- 物流コストが高騰する
- 人材が確保できず事業の衰退
改善基準告示改正は法律ではないため、違反しても罰則の規定自体はありません。
しかし、厚生労働省・国土交通省による告示のため、労働基準監督署からの指導や車両停止などの行政処分が行われる可能性はあります。
行政処分は実質事業継続に直結するため、事業者の方は軽く捉えず必ず対応を行いましょう。
社名が公開される
改善基準告示改正に対応しなかった場合、国土交通省から是正勧告が行われる可能性があります。
勧告された事業者は、荷主勧告制度に基づき社名が公表されます。
不名誉な内容が広く知れ渡ることになるため注意が必要です。
物流コストが高騰する
改善基準告示改正は、従来よりもドライバーの拘束時間が短くなります。
そのため、多くの事業者はこれまでよりも少ない時間で同量の荷物を運ばなければなりません。
もし改正内容に対応できなければ、人を増やして運行せざるを得ないため、実質物流コストが上昇します。
また、これまで以上にドライバーの取り合いとなるため賃金の上昇も免れないでしょう。
事業者側はできるだけ業務フローを効率化し、コストの上昇を抑える工夫が必要です。
人材が確保できず事業の衰退
改善基準告示改正に対応しない事業者は、そこで働きたいというドライバーが減り人材の確保が難しくなります。
人が確保できなければ事業継続自体が困難になるため、事業の衰退へとつながるでしょう。
企業価値を低下させることが無いよう、必ず改善基準告示改正には対応してください。
3. 改善基準告示改正に対応するためのポイント
改善基準告示改正に対応するための方法を、2点紹介します。
- サプライチェーン全体での拘束時間削減
- ITツールを用いた物流DX
物流プロセス全体を根本から見直し、ツールなどを用いて効率化を推進することが重要です。
対応方法に苦慮している事業者の方は参考にしてください。
サプライチェーン全体での拘束時間削減
ドライバーの拘束時間を削減するためには、どこか1ヶ所だけでなく物流プロセス全体で見直しが必要です。
荷受けや荷役時間を削減し、効率的な運用で全体の業務時間を短縮しましょう。
具体的には、ツールなどを活用して人の手で行っていた作業を自動化したり、管理を簡単にしたりするのが有効です。
ITツールを用いた物流DX
業務プロセスを効率化するために、ITツールを用いた物流DXを目指すのがおすすめです。
例えば、トラックや荷物の位置をGPSで把握できるGPSトラッカーを使えば、荷主と受け主で連携がしやすくなります。
また、バース予約システムなどを活用して荷待ち・荷役時間の短縮に取り組むのも良いでしょう。
ITツールを活用すれば、これまで時間がかかっていた作業を大幅に短縮できる可能性があるためぜひ利用してください。
4. 物流事業者は改善基準告示改正への対応に取り組もう
本記事では、トラック運転者の改善基準告示改正について解説しました。
2024年4月からの改正では、トラックなどのドライバーの拘束時間や運転時間が見直され、休憩時間も伸びました。
そのため、事業者は従来のような配送を行いにくくなる点が懸念されます。
しかし、ドライバーの健康面や安全面から必要な対応なので、この機会に業務プロセスの根本的な見直しを行いましょう。
まずはGPSトラッカーなどのITツールを用いて、業務効率化を検討してみてください。