近年、SDGsや脱炭素化社会を目指す世界的な傾向から、各企業にはCO2排出量を把握して削減することが求められています。
特に2024年以降、金融庁は東京証券取引所プライム上場企業を対象としてCO2排出量の開示を義務づける検討に入りました。
国際的には非上場企業も対象となっている国があるため、日本の荷主事業者にとってもサプライチェーンにおけるScope3までの把握は急務です。
そこで本記事では、サプライチェーン排出量におけるScope3とは何か、CO2削減のポイントについて解説します。
目次
1. サプライチェーン排出量におけるScope3とは何?国際的な背景や目的
サプライチェーン排出量の背景
Scope3とは間接的に排出されるCO2
Scope3までのCO2排出量の適用開示が国際基準に
2. 物流業界におけるCO2削減の取り組み
物流業界でのCO2排出量(二酸化炭素 排出量)
荷主事業者、物流事業者のCO2削減に向けた取り組み方
ITツールを用いたCO2排出量(二酸化炭素 排出量)の把握
モーダルシフト(車から船舶や列車への変更)
電気自動車など次世代燃料への変更
エコドライブなど運転時のアクション
3. 荷主事業者はScope3までのCO2排出量(二酸化炭素 排出量)の把握が必要
まずはサプライチェーン排出量におけるScope3とは何なのか、国際的な背景や目的について解説します。
CO2などの温室効果ガス排出量の把握と削減は世界的な流れなので、CO2排出量が多いトラック輸送を活用する荷主事業者にとっても無関係ではありません。
どういった背景で必要とされているのかを押さえておきましょう。
サプライチェーンとは、原料調達や製造から物流などの一連の流れのことを指します。
その流れの中で排出されるCO2などの温室効果ガスのことをサプライチェーン排出量と呼びます。
サプライチェーン排出量を把握して削減する目的は、簡単にいえば「地球温暖化を抑制して持続可能な社会を築くためです。
また、サプライチェーン排出量は「GHGプロトコル」により国際的に規定されています。
サプライチェーン排出量を把握することは環境的な側面だけでなく、企業活動全体の管理という観点から機関投資家などにも重視されています。
企業価値そのものに影響する内容で、経済・リスクの側面からも社会的に求められているという点を押さえておきましょう。
サプライチェーン排出量については、現在Scope3までの把握が求められています。
Scope3とは、サプライチェーンにおけるScope1と2以外のものを指します。
Scope1 |
事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 |
Scope2 |
他社から供給された電気、熱の使用に伴う間接排出 |
Scope3 |
Scope1とScope2以外の間接排出 |
例えば、自社が委託したトラックから排出されるCO2は、Scope3となります。
このように、事業者が間接的に排出するCO2排出量がScope3に該当します。
自社だけでなく、間接的に関わる部分でのCO2排出量の把握が求められているのです。
2023年6月、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」Scope3の開示義務化を確定しています。
これにより、国内でも上場企業のScope3までの実態把握が求められる流れとなりました。
既にアメリカの一部地域では非上場企業も含めてScope3までの報告・開示が義務化される法案が可決されています。
そのため、企業のサプライチェーンにおけるCO2排出量の報告はもはや国際基準となっており、今後は日本の非上場企業でも影響があるでしょう。
2024年2月には金融庁が東京証券取引所プライム上場企業にScope3までの開示義務づけに関する検討に入っており、今後CO2排出量の把握と開示が求められる方向となっています。
物流業界におけるCO2削減の取り組み方や、現状について紹介します。
事業活動におけるCO2排出量の把握は、荷主事業者においても必須となる可能性が高いため、背景や削減方法をぜひチェックしておきましょう。
2022年の国土交通省からの発表によると、日本のCO2総排出量10億3,700万tのうち、物流事業を含む運輸部門からの排出量は1億9,200万tとなっています。
全体のおよそ18.5%を占め、第一位の産業部門(34.0%)に続き第二位のCO2排出量です。
また、うち45%が自家用車で、トラックなどの営業用貨物車は21.6%で2番目に多い数値です。
そのため、荷主事業者、物流事業者によるCO2削減は社会的な効果も大きい取り組みとなります。
荷主事業者、物流事業者のCO2削減に向けた取り組み方法について解説します。
実際にどのようにしてCO2の排出量を把握し、削減に向けて取り組めばいいか分からない方はぜひ参考にしてください。
CO2排出量の算定方法については、環境省からのガイドラインもありますが、ITツールを用いてCO2排出量の把握も可能です。
例えば、「物流トラッキングシステム」では輸送距離からCO2排出量を可視化できるため、CO2排出量の把握にも活用できます。
GPSトラッカーは低コストかつ、配線不要で簡単に取り付けることができ、物流「2024年問題」への対応など物流のDX化に大きく貢献できるシステムなので、車両の位置情報など輸送状態の見える化に悩んでいる事業者の方は検討してみましょう。
このように、CO2の排出量を把握するにはITツールを使うことで効率的に確認できます。
CO2排出量は把握しただけに留まっては不十分です。
モーダルシフトなどを行い、削減に向けた取り組みを行うことが重要です。
モーダルシフトとは、輸送方法の転換のことを指します。
例えば、従来トラックで何台にも分けて荷物を運んでいたところを、船舶や列車を活用して運ぶことで1回の輸送あたりに発生するCO2排出量を削減できます。
運送コストの軽減やドライバーの長時間労働の削減などにも繋がるため、ぜひ検討してみてください。
CO2排出の無い電気で動くトラックや、水素が原料となる燃料電池で動くトラックなど、環境に対応した運送手段の普及も進められています。
コストや燃料補給の観点からまだまだ導入段階ですが、今後こうした次世代燃料で動くトラックもCO2排出量削減にはおすすめです。
ドライバーも、アイドリングストップを小まめに行うなどの対応によりCO2排出力の削減に繋げられるでしょう。
一人だけの行動では微々たる削減ですが、業界全体で取り組むことで大きな効果を発揮します。
本記事では、CO2排出量におけるScope3とは何か、国際的な流れと荷主事業者、物流事業者ができる取り組みなどを解説しました。
サプライチェーンにおけるScope3までのCO2排出量の把握は、国際的な時流により今後荷主事業者に取っても避けては通れないでしょう。
ITツールの導入などによってCO2排出量を把握し、削減に繋げていくことが地球環境への貢献だけでなく企業価値の向上に繋がります。
まずは「物流トラッキングシステム」などのITツールを導入し、CO2排出量の実態把握から始めてみてはいかがでしょうか。
物流の効率化はトラックの運転時間の削減にも繋がり、結果的にはCO2削減へと貢献できるはずです。