「利益の共有」を意味するゲインシェアリングは、物流フローの中にいる顧客や事業者が共同でコスト削減などに取り組み、全体で利益を共有することを意味します。
そこで本記事では、ゲインシェアリングとは何か詳しく解説します。
物流「2024年問題」によってドライバーの長時間労働が課題となる中、3PLだけではなく、荷主も含めて業界全体で取り組むことが重要です。「活用方法が知りたいがやり方が分からない」という事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ゲインシェアリングとは「利益の共有」を意味し、物流業界で使用される用語のひとつです。事業者間で生じる利益を共有し合い、全体での業務効率化やコスト削減のことです。
たとえば、配送状況把握において、荷主側と運送事業者間でGPSトラッカーなどを使用し、位置情報を共有することで、これまで双方で発生していたやりとりを省くことができます。
確認作業に掛かる時間が5分減れば、1配送で計10分の作業不可が減ることになり、工数削減が見込まれ、人件費削減が可能となります。特に有事の中、工数が増える場合においては有効です。
このように、事業に関連する各所や業界全体で利益をあげていくことを、ゲインシェアリングとよびます。
本項では、ゲインシェアリングについて以下の3点を解説します。
概要やメリット・デメリットを押さえたうえで導入を検討しましょう。
ゲインシェアリングはサプライチェーン関連各所(3PL含む)、が一丸となって改善に取り組むことが重要です。
3PLとは「サードパーティー・ロジスティクス」の略称で、荷主や運送業者以外の第三者が物流業務を包括して受託するサービスのことです。物流のノウハウを持たない荷主の企業が、物流をアウトソーシングして効率的な配送を実現したい場合に利用します。
従来の荷主は自社で荷受けや出荷、保管といった物流機能を持っている必要がありましたが、3PLを活用することで荷主は本来の営業活動に注力できると雇用確保のリスク軽減を見込める事が利点です。
いわば、荷主企業と配送業者との間に立つのが3PLなので、ゲインシェアリングを推進する中心的な役割を担っています。
ゲインシェアリングのメリットは、主に以下の3点です。
ゲインシェアリングは物流フロー全体に関わる業者が双方で利益を享受できるため、業界や関連事業者全体の作業効率化につながります。それに伴って人件費や保管費用などのコスト削減にも有効です。
また、関係各所で効率化が図られるため、物流品質をはじめ何か問題が起こった際のリスク分散にも繋がります。
ゲインシェアリングの主なデメリットは以下の通りです。
ゲインシェアリングを実現するためには物流プロセスの中で、複数箇所にわたる分析や改善が必要です。そのため、どこか1ヶ所を改善した程度では有効とはいえず、実際に効果を出すには時間がかかります。
また、システム化して効率的な管理や運用が必要で、導入時点は大きく費用がかかるでしょう。従来のシステムからゼロベースで見直す必要があり、システム管理や全体の管理など別の手間が増える懸念があります。
ただし、確かに短期的にはコストや手間がかかりますが、長期的にはコスト削減につながる可能性が高いため、ゲインシェアリングに向けた取り組みはおすすめです。
ゲインシェアリングを活用するためのポイントは以下の通りです。
まずは物流プロセス全体の詳細な分析を行い、どの工程にボトルネックがあるかを洗い出します。時間やコストをどの工程に要しているかを知ることから始めましょう。
そして、課題に対して改善策を考え、関係各所に改善依頼をするなど調整を行います。また、ITツールなどの積極的な導入を検討し、物流DXへの取り組みを推進するのが良いでしょう。
たとえば、荷待ち時間や動態確認作業の削減には「物流トラッキングシステム」の導入が有効です。トラックや貨物の位置情報が把握できるため、従来納品確認で時間を要していた荷主と荷受側の連携が円滑になり、作業員の適正配置や荷待ち時間の調節などに利用できます。
物流プロセス全体の効率化を図るには、こうしたITツールの導入をするのが効果的です。
本記事では、ゲインシェアリングの概要や利点などを解説しました。「利益の共有」を意味するゲインシェアリングは、物流プロセスにおける問題点の共有を関係各所に行い、で効率化やコスト削減を図ることが重要です。
サプライチェーン全体に関わる企業間での密な連携が不可欠で、実現するにはITツールの導入を進めるのが良いでしょう。まずは、「物流トラッキングシステム」などトラックやトレーラーの位置情報を共有できるシステムの導入から検討してみてはいかがでしょうか。