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2025年6月公布「貨物自動車運送事業法改正」とは何?概要について解説

作成者: JFE商事エレクトロニクス|Dec 10, 2025 7:12:55 AM

 

2025年6月に公布された「貨物自動車運送事業法改正」の主なポイントや背景などを解説します。

物流の2024年問題における輸送能力低下を背景として改正されており、労働者の処遇改善や死亡・重傷事故件数の増加に基づき、物流の維持・向上を図ることが目的です。

 改正内容がよく分からないという事業者の方は、ぜひ本記事の内容を参考に押さえておきましょう。

 

目次

 


貨物自動車運送事業法はどんな法律?改正の背景も解説

貨物自動車運送事業法とは、その名の通りトラックなどの貨物自動車の運送業に関わる法律のことです。運送事業が正しく運営されることや、法的な届け出などについて規定されています。

2025年6月に改正されており、その背景について以下の2点を解説します。

  • 物流の2024年問題における輸送能力低下の懸念
  • 軽トラック運送業における事故の増加

 昨今社会的課題となっている物流の2024年問題などへの対応策のひとつとして改正されているので、物流に関わる事業者の方は必ずチェックしておきましょう。

 


物流の2024年問題における輸送能力低下の懸念

トラックドライバーの残業規制などにより、国内における輸送能力の著しい低下が懸念される物流の2024年問題。物流事業者や一般消費者が協力し、従来の商慣習などを見直したり、物流を効率化したりといった対策が求められます。

貨物自動車運送事業法はその中でも、貨物自動車による安全な輸送や、貨物自動車運送事業の健全な発達を目的として改正されることとなりました。

 


軽トラック運送業における事故の増加

また、軽トラック運送業における事故の増加も背景のひとつです。国土交通省の発表によれば、平成28年から令和5年にかけて事業用貨物軽自動車の死亡・重傷事故件数は倍増しています。

引用元:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全規制について」

こうした背景からも、より安全な輸送を行うために法律の改正が求められています。

 


貨物自動車運送事業法改正の主なポイント

貨物自動車運送事業法改正の主なポイントは、以下の5点です。

  • 事業許可が5年ごとの更新制に
  • 実運送体制管理簿の作成義務拡大
  • 無許可業者(白トラ)への委託禁止
  • 再委託(二次委託)の努力義務
  • 適正運賃の確保による労働環境の改善

より健全な事業運営ができるよう、さまざまな規制が強化されています。

 


事業許可が5年ごとの更新制に

改正により、事業許可が5年ごとの更新制になります。従来は一度許可を取得すれば更新の必要はなく、取り消されない限りは有効とされていました。

しかし、改正後は5年ごとに審査があるため、安全確保やドライバーの処遇、適切な運賃などの基準を満たせない場合は更新ができない可能性があります。

これにより、事業継続を行うためには適切な事業環境を整えなければならなくなりました。

 


実運送体制管理簿の作成義務拡大

従来元請事業者は、実際に運送を行った事業者の情報を記載する「実運送体制管理簿」を作成して、1年間保管することが義務付けられていました。

改正により、以下の事業者についても実運送体制管理簿の作成義務が必要となります。

  • 特定貨物自動車運送事業者
  • 貨物軽自動車運送事業者
  • 第一種貨物利用運送事業者
  • 第二種貨物利用運送事業者

これにより、荷主から依頼を受けた事業者が元請けとして管理簿を作成し、委託経路を記録する必要があります。 

 


無許可業者(白トラ)への委託禁止

無許可で運送行為を行う「白トラ」への規制強化が行われます。違反した荷主企業には100万円以下の罰金などが科されることになります。

従来は荷主には罰則はありませんでしたが、今後は罰則が課されるため注意が必要です。無許可事業者の違法な運送事業を根絶し、安全かつ適切な輸送ができるよう整備されます。

 


再委託(二次委託)の努力義務

再委託は原則二次の下請けまでに抑えるよう努力義務が課されるようになりました。改正前は委託の回数に制限が無く、度重なる委託により運賃の中抜きが発生します。

それにより、末端の下請け事業者が適切な処遇で事業に従事できないなどの問題が発生していました。法改正により委託は二次請けまでに制限されることになったため、労働者の処遇改善や人材の確保の観点からも改善が見込まれます。

 


適正運賃の確保による労働環境の改善

トラックドライバーなどの労働者の処遇改善が、法的に義務化されることになります。従来も規定自体はありましたが、努力義務に留まっていました。

具体的な処遇の基準は明記されていませんが、適正な処遇でないと判断された場合は、事業許可が更新できないなどの事態に発展する可能性があります。

また、それに伴い実運送事業者が持続的に事業を行うため、国土交通省が適正原価を定め、適正原価未満での受託ができません。

これにより、安すぎる運賃や過度な中抜きを排除し、ドライバーの賃金改善や長時間労働の抑制などを目指します。

 


貨物自動車運送事業法に対応した業務改善が急務

貨物自動車運送事業法は、事業許可が5年制になったり、ドライバーの処遇改善が明記されたりといった改正が行われています。事業者にとっては従来の働き方を変化させる必要に迫られ、業務の効率化が急務です。

 


事業者別の影響分析(大手
事業者、中小事業者、個人事業主)

大手事業者、中小事業者、個人事業主ごとに受ける影響については、主に以下の通りです。

事業者区分別の主な影響 - カラーボーダー版
事業者区分 主な影響
大手事業者
  • コンプライアンス体制の強化
  • 二次請けまでの委託管理
  • 適正原価での受発注
中小事業者
  • 適正運賃確保のための交渉力強化
  • 管理・記録業務の増加対応
  • 白トラ委託の徹底排除
個人事業主
  • 白トラ規制による公正競争環境
  • 書面交付の徹底
  • 全車両の業務記録義務

 

全事業者5年ごとの許可制になるので、日ごろから健全な事業運営が必要になります。また、白トラ規制や適正原価の担保など、まじめに取り組む事業者を守る法改正になっているのが特徴です。

管理記録や労働者の処遇改善など手間やコストの増加が見込まれますが、業務改善がうまくできれば健全に売上を上げやすい環境になるでしょう。

ただし、こうした法改正への対応には、現場レベルの改善だけでなく物流プロセスの抜本的な見直しが必要です。物流DXはその一環で、トラックの荷待ち・荷役時間削減のために、GPSトラッカーを使用するなどの改善が例としてあげられます。

弊社では、物流トラッキングサービスを通じて、輸配送の可視化や効率化への対応を支援するソリューションを提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。