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【2025年版】物流業界が抱える課題や改善策は?2024年問題から現状への変遷

作成者: JFE商事エレクトロニクス|Nov 18, 2025 7:02:53 AM

 

かねてより問題視されていた2024年問題。2025年を迎えた今、2024年問題で挙げられていた課題はどうなっているのでしょうか。また、それに対する国の対応や最新の法改正はどうなっているのかを解説します。

結論から言えば、2024年問題で懸念されていた輸送能力の著しい低下は2025年現在顕在化していません。しかしこれは問題が解決したわけではなく、需要減少や事業者の努力により一時的に緩和されているに過ぎません。2030年には34.1%の輸送能力不足が予測されており、依然として深刻な課題が残っています。

目次

 


2024年問題とは

2024年問題とは、トラックドライバーへの働き方改革関連法の適用により、従来運べていた荷物が運べなくなるかもしれないという問題のことです。

●    年間960時間の時間外労働の上限規制
●    年3,300時間までとする拘束時間等の規制

これらはトラックドライバーの長時間労働によって支えられており、過労などさまざまな問題点を孕んでいました。それが適正化されることにより、従来の輸送能力を発揮できなくなるという懸念があったのです。

2025年4月1日より2つの法改正が行われている

社会的な物流課題への対応として、2025年4月1日には以下2つの法改正が行われています。
概要とともに解説します。

法改正一覧 - JFEスタイル(列幅調整)
法改正 概要 対象
物流効率化法
  • 荷待ち・荷役時間削減や積載効率上昇の努力義務
  • 特定事業者への規制強化(義務化)
  • 特定荷主には物流統括管理者(CLO)の選任を義務化
荷主企業・物流事業者
貨物自動車運送事業法
  • 運送契約締結時等の書面交付義務
  • 委託先の健全な事業運営の確保に向けた取組
  • 実運送体制管理簿の作成・保存義務
物流事業者

 

物流の効率化や、事業者の健全な発展などを目的とした法律です。こうした法規制の強化により、業界全体での効率化や健全な労働環境をつくることを目指す必要があります。

なお、全日本トラック協会の調査(2025年3月)によれば、荷主の物流効率化法認知度は56%にとどまっており、2026年の義務化に向けて認知度向上と準備の加速が急がれています。

出典: 全日本トラック協会「物流の2024年問題対応状況調査結果」2025年3月

 

 

2025年現在物流業界が抱える課題

2025年現在物流業界が抱える課題は主に以下の5点です。

●    人手不足
●    荷待ち・荷役時間の増加
●    物流コストの上昇
●    再配達の増加
●    その他の課題

2024年から現在における変遷なども紹介するので、ぜひ確認してみてください。

人手不足

2024年問題にて懸念されていた人手不足ですが、現状当初懸念されていたような混乱は起きていません。ただし、ドライバーあたりの平均拘束時間は40分減少(後述)しているので、従来よりも人手不足が加速しているとは言えるでしょう。

ここ5年における運送業・郵便業の就業者数推移は以下の通りです、年々下降の一途をたどっているのが分かります。

就業者数推移 - JFEスタイル
年度 就業者数
2024年 345万人
2023年 349万人
2022年 351万人
2021年 352万人
2020年 349万人

 

※引用元:労働力調査

政府は物流DXやモーダルシフトなどの輸送効率の向上などを支援する仕組みに取り組んでいるところです。人手不足の解消や対策には、こうしたサプライチェーン全体での効率化は必須となります。

荷待ち・荷役時間

2024年における、ドライバーの平均荷待ち・荷役時間はほぼ横這いで、改善が進んでいません。

※引用元:日本流通新聞

2025年4月施行の物流効率化法では、荷待ち・荷役時間の削減が努力義務化され、2026年4月からは特定荷主に義務化されます。今後、これらの法規制がどの程度実効性を持つかが注目されています。

物流コストの上昇

ロシアのウクライナ侵攻などの影響もあり、世界的なエネルギー価格の上昇が、物流コストの上昇にも繋がっています。

※引用元:内閣府ホームページ『「2024年問題」による物流費上昇の背景と物価に与える影響について』

年々物流費は上がっており、今後も上がる可能性があります。事業者としてコントロールの難しいところでもあるため、業界全体の効率化により輸送能力を上げ、一回あたりの効率的な運送を目指すことが重要です。

再配達の増加

近年では再配達数の増加も問題視されています。以下は国土交通省による宅配便の取扱個数と、再配達率の推移です。

※引用元:国土交通省

荷物の取扱数は加速度的に増えています。一方で、再配達率はほぼ横這いです。これは再配達の数が増えていることを意味します。各物流業者やAmazonなどの大手ECモールでは置き配の推進などが行われたり、駅などへの宅配ロッカーの設置が進むなど、再配達削減の仕組み化が進んでいます。

その他の課題

他にも、現状以下のような課題があります。


CO2削減
2050年カーボンニュートラル目標に向け、物流業界のCO2排出削減が急務です。
EVトラックや水素トラックの導入、モーダルシフト(トラック→鉄道・船舶)の推進が求められています。

倉庫スペースの不足

EC需要の拡大により、都市部を中心に物流倉庫が不足しています。特に首都圏では賃料上昇が続いており、郊外への分散や多層階倉庫の活用が
進んでいます。

インフラの老朽化
高度経済成長期に整備された道路・橋梁の老朽化が進み、大型車両の通行制限や補修工事による渋滞が物流効率を低下させています。

トレーサビリティ
食品の安全性確保や、サプライチェーン全体の可視化のため、
IoTやブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムの導入が進んでいます。

こうした問題を解決するには、ITシステムを活用し、業界全体で課題解決に取り組むことが重要です。

 

物流課題への解決策

物流課題への解決策は、大きく分けると以下の3点です。

●    「物流DX」の推進
●    「物流GX」の推進
●    サプライチェーンの強化

事業者で取り組むものと、業界全体で取り組むべきものの2つに分かれます。効率よく荷物を輸送するうえで重要なポイントなので押さえておきましょう。

「物流DX」の推進

まず重要な点として、物流DXの推進が挙げられます。ITシステムを活用し、より効率的な仕組みを整えていくことが重要です。

たとえば、GPSを活用したトラックの位置情報を追跡するシステムを活用すれば、集配センターなどと連携して荷待ち・荷役時間の削減などにつなげられるでしょう。

ドライバーの安全を担保する観点からも活用可能で、人手不足をシステムで補うことも期待できます。

「物流GX」の推進

続いて物流GXの推進もポイントとなってきます。GXとはグリーン・トランスフォーメーションのことで、脱炭素を意味します。

たとえば、ダブル連結トラックや自動運転トラック等を導入したり、モーダルシフトによって輸送効率を向上させることなどが挙げられます。単純に二酸化炭素の量を減らせるだけでなく、輸送能力の向上にもつながり、働く環境の改善が進む中で重要な要素です。

サプライチェーンの強化

その他、サプライチェーン全体での強化も必要不可欠です。ひとつの事業者だけで改善を行うだけでなく、受け主や荷主など、輸送に関わるセクションの全てで改善に取り組みます。

例として、トラックの集配システムをサプライチェーン全体で取り入れれば、荷待ち・荷役時間を削減することになります。こうした取り組みを業界全体で行っていくことが、物流2024年問題からつながる各種課題への対策となります。

2025年現在も物流課題の解決にはDXやGXが重要

2025年現在、2024年問題で懸念されていた輸送能力の著しい低下は顕在化していません。しかし、これは問題が解決したわけではなく、需要減少や事業者の努力により一時的に緩和されているに過ぎず、物流DXやサプライチェーンの強化など各事業者だけでなく社会全体で解決に取り組む必要があります。

人手不足の解消や業務の効率化の観点では物流のDXは有効な手法です。まずはGPSトラッカーなど導入しやすしIoTツールから検討し、段階的にデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。